ヒトラーと言えば、ナチスを率いた独裁者です。ヒトラーが売れない画家から最高権力までなれたひとつの要因として演説の巧みさがあります。
私もヒトラーの演説のことに興味を持っていたので、ヒトラーの演説を読んでみました。
ヒトラーの演説は時期によって違った
映画独裁者や映像の世紀でヒトラーを映像を見た経験があるだろうか?猛々しく我を忘れたような激しい演説をするヒトラー。それが私のヒトラーの演説の全てでした。ドイツ国民に対する演説では常に頼りになる独裁者ヒトラー。
しかし、これはある一面でした。ヒトラーはチャップリンが独裁者を映画公開する時期に、ヒトラーの演説は国民に対してどんどん影響力を低下させます。
戦局もあったし、自身も病気にかかったヒトラーは国民演説を行うことはほとんどありませんでした。演説をするにしても、かつての勇ましさは失われてしまったようです。
そう、私が知っていたヒトラー演説はナチスが政権を取った頃、ヒトラーがもっとも演説をしていた頃の姿でした。飛行機に乗って、大衆の前で金切り声で叫ぶヒトラーの映像は言われてみれば戦争前の姿です。戦争後のヒトラーが演説している映像を私は見たことがありませんでした。
かつて、ヒトラー最後の12日間を見た時、左手が震えて弱弱しいヒトラーが映し出されていました。もしかしたら、もう敗戦が混み始めた1942年頃から神経衰弱状態になっていたのではと。
大衆に飽きられた独裁者の演説
ナチスが政権を奪取すると、ドイツ国民はヒトラーの記録映画や演説を見ることになりました。学校でも記録映画を見て、その感想を書くことになっていました。そこでの感想を読んで私は驚きました。
私は当時ドイツ国民はヒトラーに心酔していたので、当然記録映画の感想文を書いた小学生はヒトラーに対して肯定的な態度を示したと思っていたからです。
子供たちへの影響は一様ではなくさまざまである。その映画のことを、こんなくだらないものは見たことがないと言った子供もいた。
本書169ページより引用
え、ヒトラーの記録映画を見せられた生徒はこんなもの見せられて、つまならかったようです。言われてみればそうですよね。こんなおっさん達が演説して、叫んでるの見ても当然楽しくありません。
私もそうですが、今どこかの政治家が叫んで、大衆が心酔する姿をテレビ番組があったら、私はその番組を切ります。
ヒトラーの演説を聞かされて、うんざりしている人達の意見がこの本では出てきます。工場でヒトラーの演説を聞いて、仕方なく聞いていた工場労働者、あと追加
定期的に、ヒトラーが演説をしている映像、ラジオ放送を聞かされたら飽きることに凄く私は共感しました。そうか、いくら演説を鍛えようとも、毎日同じ人が演説してたら飽きるという当然のことに気付かされたのでした。
現在のテレビでもそうですが、同じ話題を延々とされていたら飽きます。最近ならカルロス・ゴーンの逮捕劇を連日していますが、たまには違うことを放送するテレビ局あってもいいのではと思っちゃいますからね。
難しいので、基礎知識をつけたからの本である
ヒトラーの演説の効果がどれだけあったのか?その実態を知りたいならこの本はとても勉強になります。ヒトラーの演説を当時聞いた人々の感想が書かれており、入念なデータと共に読めるのでヒトラーという独裁者の実像に迫れます。
ただし、この本はヒトラーのことをある程度知っていないと難しい部類に入ります。ヒトラーについて簡単に知るなら、まずは映像の世紀がオススメです。ヒトラーの演説が映像で見れることと、ナチス政権の全体の流れがつかめます。
ミュンヘン一揆、我が闘争、当時最先端のメディア活用、フォルスワーゲン、ラインラント進駐、オーストリア、ズデーテン地方への領土拡大などなど。このへんの単語を見てわかるなら読んでもいいはずです。ただわからないと読むのは厳しいでしょうね。
まずは映像の世紀を見て下さい。
NHKスペシャル 映像の世紀 第4集 ヒトラーの野望 [DVD]
最後に:読んだら、ヒトラーの演説を動画で見よう
ヒトラーのジェスチャーや仕草に関する考察を読んだら、映像の世紀のヒトラー演説のシーンを解説している箇所があります。そこでヒトラーは腕組みをしています。その仕草も本書でしっかり解説されています。
検索したらヒトラーの動画はネットで見れます。彼の仕草やジェスチャーの技法を知った上で見ると冷静に見れます。何も知らないで見ていると、独裁者ヒトラーに魅せられてしまいますが、こういった視点があるだけでどこか醒めた目で見れます。
にしてもヒトラーの演説に熱狂するドイツ人の映像をかなり見たことがあるので、私はヒトラーの演説はいつでも大衆を歓喜させたものだと思い込んでいました。
だがいくら良い演説だろうと良い気分になるだけでお腹は満たされません。そんな当然のことに気付かされた本でした。以上