【感想・陰謀の日本中世史】歴史に完璧な答えなんてないがわかる本

【感想・陰謀の日本中世史】歴史に完璧な答えなんてないがわかる本書評

世に溢れる陰謀論がどんな理論を展開しているのか?何故その理論を人々が受け入れてしまうのか?を解説した本です。

歴史的な側面から陰謀論の無茶ぶりを非難しています。しかし、歴史に興味のない人でも読んだ方がいいです。何故なら最後の章を読むことで何故詐欺のような上手い話に乗せられしまうのかを説明しているからです。

私なりの感想を書きます。私としてはこの本を読んで陰謀論は陰謀論として理解できればいいと思っています。

歴史学者は専門バカではない

歴史家は史料でしか歴史を判断しない。そのような意見があります。こんなふうな意見です。

いわゆる「専門バカ」というわけです。(略)

歴史学者という人たちは、常に史料に目を向けるという職業的修正があるため、史料が語るものだけに目を向けて、自分たち、あるいはは先輩たちが作りあげてきた方法論にしたがって、その史料を解釈します。ところが、そうした方法論や専門の学者特有の視点で歴史を描こうとすると、どうしても人間としての当たり前の常識から遊離してしまい、本当の事実から遠ざかり、歴史学界の”常識”ぶ照らしてうまく合致し、上手に説明のつく「事実」を導き出してしまうわけです。

誤解の日本史12ページより引用

 

しかし、この本を読めばその意見は間違っていると思えます。

歴史学者は史料から歴史を再現しようとします。その史料に書かれていたことがどこまで正しいのか、その史料がどうして生まれたのかを延々と考えます。

史料に書かれていることをそのまま理解すると、事実とは大きく離れてしまいます。政治家が自分にとって有利な内容しか書かれていない史料を読んだら、どうでしょうかね?

敵対する勢力、個人、環境をボロくそに書かれていたら、その内容がどこまで忠実なのかよく検討するわけです。歴史家の人達は書かれた意図がどうなのかなんて考えて解釈しています。京都の貴族が地方のことを馬鹿にした記述を鵜呑みにするわけないじゃん。

だから、史料の解釈を仕事にしている職があると私は考えています。史料は歴史を解釈する上で重要な材料のひとつなのです。

この本では、著者の呉座氏が歴史について既存の研究者の意見を参考にしつつ歴史の謎を理解しようとしてます。その時に「これは史料に書かれていないから知りません」とは書かれていません。自分の知識と考えから答えを出そうとしています。

史料から読みとれることを自分なりに考えて、意見を述べています。この本を読んで、歴史学者が史料しか読めない頑固者という考えがおかしいのはわかると思います。

詐欺にひっかからない本

この本は歴史に上手い話はないと説明しています。1冊読んで、歴史がわかったら歴史学者は皆路頭に迷います。史料読んだり、年間で論文を発表して、学会で発表して、大変な人達です。

それを1冊読んでわかれば、苦労しません。そんな軽い内容でわかって、当然ながら金になりません。下記のフレーズなんて無理なんです。

これさえ読めば真実の○○がわかる

教科書の知らない、教えない

本屋に行くとこのタイトルを見た経験があるのでは?ちなみに私も最近本屋に行ったらありましたね。

この手のタイトルはビジネス本でよく見られる内容で簡単さや気楽さでお客を釣っているわけです。

「1日15分の単純作業で30万円」と同じ部類です。読んだって歴史の全部がわかりません。わかることと言えばその人が歴史をどう理解しているのかのかという1つの解釈を知るだけです。

当然のことですが、上手い話はどの分野にあるので本書を読むと詐欺に対して警戒心が高まります。1冊読んで、その分野のことが理解できたら、本当に苦労しません。そんな本が存在したら世界を変えるでしょう。

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答えを知りたがるからわかった気になる

陰謀論の特徴として、単純明快で1つのことを原因にします。義経と頼朝は最初から仲が悪いから最後に大喧嘩したと理論を展開します。

しかし、本書でも書かれた通り義経と頼朝が最初から対立していたわけではないことが書かれています。宿命の対決みたいな話は結構後付けが多いわけです。まあ、歌舞伎やドラマにするなら作りやすいだろうけど。

よく日本が第2次大戦で負けたのは○○の責任だと主張する人がいます。共産党が世界を裏で操ったとかの話です。

だが、ほとんどのことはあらゆる要素が複合的な絡み合い、発生します。何が原因で何が悪いのかなんてわかりません。今まさに歴史はあらゆる要素が交わって色んな人がその時に応じて行動した積み重ねなんですと話しています。

だから、その時代の人達がどんなことを思い、行動したのか?史料、本を読んで各自で勉強しましょうねという話です。これ、私の持論ですけどね。

すっきりしませんよね。学校の問題みたいに単純明快な答えが欲しいわけです。しかも勉強するのめんどくさいわけです。

誰かの責任にすれば話は丸く収まるかもしれませんね。ほら、陰謀学者のお決まり文句が出るわけです。「既存の歴史家がちゃんとした歴史を書かないから」だと。まるで自分だけが正解にたどり着いた特別な人間だと自己アピールしまくります。

だから単純明快な歴史を書くわけです。複雑で何が原因で、いったい何が答えなのかわからないと専門家は悩んでいるのをわかっているくせに。

陰謀論者は自説が想像の積み重ねであるのを棚に上げて、他人の説を「推測にすぎない」「確実な証拠がない」と攻撃する。歴史学は「確からしさ」を競う学問なのに、彼等は自説が100%正しいと信じて疑わない。その時点で彼らに歴史研究者を名乗る資格はないのである。

陰謀の日本中世史318ページより引用

まとめ:簡単な答えなんてない

歴史の真実なんてハッキリ言って私は到達できないと思っています。できたとしても200年くらい先のことかもしれません。過去の事件もわからないし、今の事件もわかりません。

わからないので勉強するしかないわけです。勉強して自分で納得するまで私は続けます。それだけです。

以上です、読んでもらってありがとうございます。

参考文献と本書を読んだら次にこの本を読もう

この本はなんといっても歴史家が陰謀論をまとめに取り扱っている貴重な本です。だいたいは陰謀論やトンデモ本はその分野の人が書いている人が多いので、本当に貴重な本です。

著者の切れ味するどい論理は痛快かつ深いです。

陰謀論はだいだいトンデモ本に多いです。陰謀論によくある論理の飛躍、単純明快さ、2項対立、結果から逆行して原因を引きだすのパターンが読んでいて確認されます。

歴史学者は史料しか事実を判断しないと一方的に断言している本です。しかし、呉座氏が歴史学者として史料だけでなく当時の時代背景、状況から歴史を考えている姿を見せられるとどっちが頑固なのやらと思ってしまいます。

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